ジャズピアノトリオ"ai kuwabara trio project"をはじめ、ジャズシーンを中心にベースプレイヤー、アレンジャー、コンポーザーとして幅広く活躍している森田 悠介氏。
今回はMUSICLAND KEY店内にてdragonflyベースをじっくり弾いていただき、プレイヤーとしての率直な意見を伺いました。
鼎談
森田 悠介
×
(株)ハリーズエンジニアリング
フィゲラス 伸成
×
MUSICLAND KEY
田辺 洋太郎
(L to R)
MUSIC LAND 田辺
森田 悠介 氏
(株)ハリーズエンジニアリング フィゲラス 氏
出音の瞬発力と言うか、自分が弾きたいスピードにしっかりと反応してくれる出音の速さを感じましたね
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田辺(以下、田):今日はよろしくお願いします。
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森田(以下、森):よろしくお願いします。
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フィゲラス(以下、フ):よろしくお願いします。
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田:まず、今回は何故森田さんをお招きしたかと言うと……。
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フ:実はもともと僕と森田君は知り合いで、エフェクターとか機材のことで色々相談乗っていて。もちろんプレイヤーとしてもファンですし、今やっているトリオ編成のやつもすごく好きで、CDもよく聴いていて。いつか一緒に何かできれば、なんて思っていたんですよ。それでイベントでうちのブースに遊びに来てくれた時に弾いてもらったのが最初だったかな?
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森:実はその前に触ったことはあったんですよ。知り合いのベーシストの方でdragonflyを使っている方がいて。それを触らせてもらったことはあったんですけど、ちゃんとした環境でアンプ繋いで試奏したのはその時が初めてでしたね。
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フ:そう。それで弾いてもらったらその時も良いって言ってくれていたので、ぜひ今日のこの機会にまたじっくり弾いてみてもらいたいなと思って。
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田:今はジャズのピアノトリオでの活動が中心ですか?
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森:そうですね、「ai kuwabara trio project」というピアノトリオで、そこでは最近は音色もアコースティックなナチュラルなトーンを追求しているんですけど、でもそれ以外でもポップスのサポートだったりレコーディングのお仕事をいただいたりする事もあるので、そういう場合はまた別のキャラクターが必要になってきますね。
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田:普段はどんなベースをメインで使っているんですか?
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森:TUNEのベースを色々使っていて。僕の師匠でもある鳴瀬喜博さんからTUNEを紹介していただいて、今日持ってきたのもTUNEの33インチのモデルです。TUNEは結構アクティブでバキッとした音色をイメージする方が多いですけど、僕の頭の中ではそういう音は鳴っていなくて、もっとウッディーなトーンで鳴らしていますね。
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田:今日弾いてもらったdragonflyは34インチと34.5インチだったんですけど、いつも弾いている33インチのベースと比べて違いは感じましたか?
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森:まず「出音がいい!」って思いましたね。しっかりベースらしい音が鳴っている。僕も普段は33インチと34インチを使い分けているんですけど、やっぱり34インチの方がしっかりとした音になる印象があって。で、今日34.5インチを弾いてみて、何と言うか……、余裕がある感じがしたんですよね。弦の振幅をしっかりと受け止めて鳴っている感じと言うか。ネックとボディもボルトオンジョイントだけど、ヒールの部分も綺麗に丸めてあってすごく弾きやすかったです。
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田:スケールが長いことで弾きづらいとは感じなかったですか?
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森:正直、スケールの長さは弾いていて気にならないというか、普通に弾きやすいなと思いました。それよりも出音の瞬発力と言うか、自分が弾きたいスピードにしっかりと反応してくれる出音の速さを感じましたね。さっき弾いていた黒柿とライトアッシュのボディのやつはその反応の速さとかEQのポイントとかが凄くマッチしていて、それら全部のバランスで凄くいいなと思いましたね。
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田:吉野杉とマホガニーボディの同じタイプのCS-5 345も弾いてみて、やっぱり自然と弾くフレージングとか鳴らし方が変わっていましたよね。
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フ:楽器を持って沸いてくるインスピレーションと言うか、自然と弾きたくなるフレーズとかもありますよね。
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森:そうですね、そういう木材の違いとかが素直にわかりやすく音に出てくるから面白かったですね。
アクティブにしたときに、パッシブの状態と全く音量も音色も変わらないのがすごく良い
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田:プリアンプについてなんですけど、dragonflyのプリアンプはEQのブースト/カットのレベルもそんなに大きくないんですよね。だけど森田さんもさっき弾いていたときに「効きが良い」って仰ってたんですよね。
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森:そうですね、ポイントを絞っていると言うか、おいしいとこだけ引き出してくれると言うか。必要十分な感じですよね。
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田:普段自分の楽器でEQを調整するときと、効き方の違いは感じました?
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森:自分の楽器の場合は、例えばミドルのEQをマックスまで上げることはまずないんですよね。そこまで上げると音が破綻しちゃうと言うか。だけどdragonflyの場合はマックスまで上げてもちゃんと使える範囲になっているし、音楽的ですよね。トレブルもマックスまで上げても決してジャリジャリしすぎないし、音が硬すぎる感じもしないし。弦をプルしたときの気持ち良い「パチン」とした音がちゃんと鳴ってくれる。
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田:まさに狙い通りじゃないですか。
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フ:ポイントというかツボを理解してもらって、嬉しいですよ!
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森:最初にアクティブにしたときに、パッシブの状態と全く音量も音色も変わらないのがすごく良いなあと思って、ということはパッシブの状態で楽器としてちゃんと完成して鳴っているってことだと思うし。だからまずパッシブでピックアップのバランサーやトーンで音を作って、それでも足りないところをプリアンプで補正してあげると言うか。それで十分良い音がしてくれるなあと思いましたね。
僕の個人的なお気に入りは、ピックアップをリアにして、ミドルのフリケンシースイッチは480Hzにして、ミッドをかなり持ち上げてあげるセッティングにして、ブリブリっと鳴らしてあげたときが、好き(笑)。
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フ:(笑)。
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森:さっき弾いたハムバッカーのやつ(CHB-5 SPECIAL)もすごく良かったですよ。あれはリアだけでも厚みがあってしっかりベースラインが弾けちゃう。
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田:でもシングルのリア単体で弾いてもいい感じでしたよね?
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森:そうですね、全然細いって感じはしないです。パワフルでコシがあって、何よりミドルがしっかり出てくれるっていうのは超重要ポイントです。
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田:dragonflyの楽器の殆どに言えることなんですけど、音の反応が早いし、クリアなんですよね。そこはどう感じました?
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森:そうだそうだ、ジャズベ系のベースって結構コードを弾いたりするとコード感がわからなくなったりすることがあるんですけど、これはかなりクリアでしたね。
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フ:例えばサウンド面で言うと、指板もパーフェローだし、フレットもステンレスだし、ざっくり言うと「硬い&硬い」なんですよ。だからもちろん高音がきれいに鳴っているって言うのもあるんですけど。でもじゃあ指板とフレットだけそれを使っとけば良いものが出来るのかと言うとそうじゃないんです。
ベースに限らず楽器って色んなパーツや木材があって。精度の高い加工をして、 それら全部をうまく組み込んで、初めて良い楽器になると思っています。最終的に全体のバランスが良くなるような木材の組み合わせだったり、ピックアップやプリアンプもオリジナルで作ったり、 大げさかもしれないけどパーツ一個一個にも気を配って作っていますね。
あるものは削れば良いけど、無いものは足せない
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田:森田さんが自分で楽器を選ぶときに重視しているところは、どんなところですか?
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森:やっぱりミドルの鳴りですね。
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田:それはパッシブ、アクティブどちらの場合でしょう?
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森:まあアクティブの楽器の場合はプリアンプありきで考えて、ミドルを足したり引いたときにどうなるかって言うのはありますけど。やっぱりパッシブにしたときに、ちゃんとコシのある芯が出てくれるかどうかは重要ですね。
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田:バンドやオケに混ざったときにちゃんとベースが抜けてくるかって言うことですかね?
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森:もちろんそれもありますけど……。あるものは削れば良いけど、無いものは足せないんですよね。
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田:ああ、なるほど。
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森:例えばドンシャリにしたければミドルをばっさりカットしちゃえば良いですけど、もともとパッシブでミドルが出ていない楽器をプリアンプで無理やりブーストしようとしても、やっぱり良い音にならなくて、なんか汚い音にしかならないんですよ。弦のノイズばかり目立ってしまったり。だから楽器本体がちゃんと鳴って良い音出ているって言うのは一番大事ですね。
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田:dragonflyはその点はちゃんと使えそうでした?
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森:いや、もう超使えそうでしたよ(笑)。アコースティックなトリオの編成とかだと少しエレキベースっぽさがあるかもしれないですけど、それはトーンのコントロールで抑えられると思うし。ジャズ系のバンドにホーンセクションが入ったりとか、音の厚みがあるフュージョンのバンドとかでもガンガン抜けてくると思うし。もうね、メジャークォリティーですよ(笑)。
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フ:メジャークォリティー!恐縮だけど、嬉しいね(笑)。
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森:これ1本でスタジオ仕事はいけちゃうと思いますよ。トラディショナルな感じもあるし、今の高解像度な音楽にもいけると思うし、スラップしたときも良いアクティブ感が出せるし。ハードコアでもアニソンでも。
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フ:実際に買ってもらったユーザーを見ても、若いハードな音楽が好きな方もいるし、少し年配の落ち着いた音楽が好きな方もいるし、そういった意味でも広く対応できているのは良かったとは思いますね。
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森:トップ材とかもオーダーすることも出来るんですよね?
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フ:もちろん。まあ材の在庫の関係もあったりしますし、この黒柿なんかは元々高級希少材で値段も跳ね上がってきている状況ではありますけれども、気になる木材があればお店のスタッフさんに相談してもらって、画像を用意したり逆にこちらから提案したりも出来ますので。
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森:僕の知る限りでは黒柿っていう材を使っているのはdragonflyくらいしか無いと思ったんですけど……。
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フ:最近増えたよ(笑)。うちはもう何年も前から黒柿使っていたんですけど、最近は国内の他社さんでも使っているところはあるみたいですけどね。
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田:(笑)。でもやっぱり黒柿はオーダーも増えていますよね?木目のインパクトも凄いし、でも見た目だけじゃなくて音も嫌なクセが出る材じゃないですし。
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森:あ、そうそう、さっきの黒柿とライトアッシュのベースを弾いていて、アッシュってもっとドンシャリなイメージがあったんですけど、「めっちゃミドル出るじゃん!」って思ったんです(笑)。あれは僕の中でアッシュの印象ちょっと変わりましたね。
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フ:アッシュは本当に優秀な材だと思いますよ。材料としてもマホガニーほど個体差も大きくなくて安定しているし。もちろんアッシュでも色々種類があるし、重量も違いますけどね。
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田:よくアッシュは音が硬いとか言われますけど、いわゆる「ライトアッシュ」って呼ばれる材はもっと鳴り方もオープンで、硬い感じはあまりしないですよね。
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森:そう、本当にそういう印象でしたね。勉強になるなあ(笑)。
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田:本当に黒柿や、トチだったり、日本国内の銘木って呼ばれる木をいち早く使い始めたのはやっぱりdragonflyだったと思いますけどね。パイオニアですよね。
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フ:うちの戸谷(ハリーズエンジニアリング代表 戸谷氏)は常々「出来るだけ日本の木を使いたい」って言っていますね。もちろん日本の木だったら何でもかんでも使えるっていうわけではないですけれど。
既存のベースから一歩踏み出した新しいベースが欲しいって言う人にも、ジャズベ派の人にも是非使ってみて欲しい
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田:今dragonflyを気にしているベーシストの方に、メッセージをお願いします。
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森:本当に最近の日本のブランドは頑張っていると思います。dragonflyは値段もさほど高すぎるわけではないと思うし、このクォリティーは凄いと思います。さっきも言いましたけど、メジャークォリティーの音です。すごくオールマイティーに使える楽器だと思いますし、それこそスタジオミュージシャンとか、現場で弾いている人達にぜひ触ってみて欲しいですね。ポップスでもフュージョンとかでも、バキバキなメタルでもいけちゃうと思いますし、これ1本で何でも出来ると思います。34.5インチのスケールとかも凄く面白いと思いますし、既存のベースから一歩踏み出した新しいベースが欲しいって言う人にも、ジャズベ派の人にも是非使ってみて欲しいですね。
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田:自分で使うとしたらどんな場面で使ってみたいですか?
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森:ん~……、もう本格的なジャズの現場で弾いているメンバーが集まっているようなバックバンドで、歌ものでもバンドのメンバーがガツガツ攻めて主張してくるような演奏の現場とか(笑)。そういうときにちょっと主張して弾きたいときなんかは超カッコ良いプレイが出来ると思いますね。オケの中での収まりも良いと思いますし。
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田:最後に、今後のdragonflyにメッセージなどあれば。
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森:あ、実はインタビューの前にフィゲラスさんとお話していた時にも話題に出たんですが……、dragonflyが作るフレットレスを弾いてみたいです!ハムバッカーで作っても面白いかもしれない。ピエゾ搭載してみても面白いでしょうし。
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フ:今度サンプル作ってみようか(笑)。
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田:楽しみにしています(笑)。本日はありがとうございました!
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森:ありがとうございました。
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フ:ありがとうございました。
Artist Information
Release Info.
ai kuwabara trio project 4th ALBUM
『Love theme』
ピアノトリオ ai kuwabara trio projectによる映画音楽からジャズスタンダード、ビートルズにキングルリムゾン、スクエアプッシャーまで初のカバーアルバム。
全国CDショップ、オンライン(iTunes,etc)、ライブ物販にて絶賛発売中。
※ハイレゾ版はe-ONKYO music、OTOTOY、etcにて取扱中。
Yusuke Morita CHEEZENESS
『1st cheeze-ness plus a』
森田悠介ソロアルバム。
サウンドクラウドをきっかけにデンマークのKradsborstig Recordsよりリリース。弦楽器をfeat. した大編成からエレクトロニクスを含んだソロトラックまでを内包する、自身の学生時代からの作品集。
オンライン(iTunes,etc)限定で発売中。
Live Info.
★Yusuke Morita mini CHEEZENESS
2015年10月24日(土)@ゲーテイン スティチュート東京(東京ドイツ文化センター)
JAZZTREFFEN 2015 Day 3
OPEN 13:00/START 14:00
TICKET ADV¥5,000/DAY¥5,500
★ai kuwabara trio project
2015年10月28日(水)@池袋 Apple Jump(SOLD OUT)
1st 20:00/2nd 21:30
TICKET ¥4,000+tax
お問い合わせ:03-5950-0689
★桑原あい ~Christmas with Strings 2015~
2015年12月22日(火)@東京サントリーホール Blue Rose(小ホール)
OPEN 18:30/START 19:00
TICKET ¥4,500(全席指定・税込)
予約:各プレイガイドにて好評発売中。→ http://sunrisetokyo.com/schedule/detail.cgi?id=469
お問い合わせ:サンライズプロモーション 0570-00-3337
桑原あいが弦楽器(バイオリン/ビオラ/チェロ/エレキベース)と共にお届けするスペシャルなクリスマスコンサート。これまでのレパートリーの弦楽アレンジ やこの一夜のためだけの新曲も。