Shin's Music

日本屈指のハンドメイドエフェクター Shin's Music

広告も無い、宣伝もしない、殆ど表に出てくる事のない、しかしこれほどまでに支持を得る知る人ぞ知る名門Shin's Music。今回はそのShin's Musicの代表である鈴木 伸一氏にお越しいただき、お話を伺いました。

対談

Shin's Music 代表
鈴木 伸一

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MUSICLAND KEY
下田 紀彦

(L to R)
Shin's Music 鈴木 氏
MUSIC LAND 下田

学校とか誰かに習ったとかじゃないんですよ、全部独学です

  1. 下田(以下、下):まずは簡単に鈴木さんの経歴をお尋ねしたいのですが?

  2. 鈴木(以下、鈴):わかりました。1989年頃だったかな?ちょこちょこ作り始めて平成に入ってから本格的に製作に取りかかりました。中学高校の頃、コピーエフェクターを作ってみよう!みたいな記事があってそれを懸命に作っていましたが、そこからそれにハマり自分でこのパーツを変えてここをこうしてなんてことをしてたらそれが仕事になってしまったってとこですよ。だから学校とか誰かに習ったとかじゃないんですよ、全部独学ですね。高校生の時には既に友達のエフェクター結構作ってましたよ!

    ご存知かどうかは分かりませんが、Shin's Musicってエフェクターだけでなくギターやアンプも作ってるのをご存知ですか?

  3. 下:噂には聞いてましたが、でもエフェクター以外見た事無いんですよね。

  4. 鈴:そうですね、お店さんで販売してる事はないですよ。アーティストさんの要望で作ることが多いですから店頭で見る事は無いですね。でもたまになんですがTV見てたらShin'sのギターが映ってるんですよ。ロゴが小さいので分かんないと思いますけど……、ちなみに紅白にも何度かギターやアンプが出場させていただいてます。

求めているのは、アンサンブルの中で如何に抜けるか

  1. 下:Shin's Musicの概念とはなんでしょう?

  2. 鈴:まず、「市場に出ていない」とか、「殆ど手に入らない」、「こんなのあったら使いたいのに」の所から、じゃ作りますか!なんですよ。

    例えば市場で発売されているエフェクター等でも、これいいんだけれどもうちょっとこうなれば使い易い、という感じで既存の物に手を加えたりしています。なので市販されている物とガラッと違うということはありませんが、でも使ってみれば違いが分かるんですよ。 サウンドもそうなんですが、ギター単独で鳴らして良いサウンドを求めている訳ではないんですよ。アンサンブルの中で如何に抜けるか、なんですよ。ですから、Shin's Musicのサウンドは大げさではないですが、アンサンブルの中で抜けるサウンドというのを目指していますね。

  3. 下:昔からあるClean Boost & Driveとかがそれに当たりますか?

  4. 鈴:まぁそれだけではないですが、それを例に上げますと、その機種はチューブマイクで拾ったクリップした様なサウンドが欲しいという所から始まって製作しました。ただ地味なんですよ、サウンドが……。「これをONすればこんなに変わるんだぜ!」じゃないんですよ、「これをONすれば良いサウンドなんだよね」、でも無いと駄目なんだよね、なんですよ。

    以前あるアーティストのレコーディングをしましてClean BoostをONした状態の曲と、OFFした状態の曲がラジオから流れて来ました、明らかにONしてる時のギターサウンドが前に出て来てるのを耳にしましたね。

  5. 下:やはりグレードの高いパーツを組み合わせて製作してあるのでその様なサウンドが得られるのでしょうか?

  6. 鈴:もちろん一部にはそれが当てはまりますが、必ずしもそうではないですね、むしろそれ以外の方が重要ですね。

    私がエフェクターを製作する時に、まずサウンドイメージの着地点があります。その着地点に到達するには必ずしもグレードの高いパーツを使えばそこに行くとは限りません。製作する上において色々な道筋がありその道筋にパーツを一個一個並べて最終的に自分のサウンドイメージに近づけて行く、もしかするとそれがグレードの高いパーツなのか、そうでないのかはわかりません。

    いわゆるマニアと呼ばれてる方みたいに、このメーカーのこのパーツがみたいなのが私にはなくて、というかそこにあまり拘ってないですね。もちろんあるんですよ、そこにこれを使えばみたいなの。でもそういうパーツって数が少なくて、同じ物が手に入らなくて今後作れないので既存の物で最高の物を作る様にしてます。

アンサンブルで弾いてみてください、とてつもなく威力を発揮する道具の一つです

  1. 下:トゥルーバイパスのエフェクターとそうでないエフェクター、もちろんトゥルーバイパスのエフェクターの方が音痩せもなく良いと思いますが、その辺はどうお考えですか?

  2. 鈴:なるほど、まぁ分からなくないですね。弾いてる感触としてピッキングの引っかかる感じだったり、ピッキングした時に何て言うんですかね、食らい付いてくる感じが得られるのがトゥルーバイパスのエフェクターだと思うんですよ。そうでない物だと原音が痩せてしまってピッキングに付いて来ないんですよね。

    でも、これって弾いてるプレーヤーにしか分からなかったりするのですが……(笑)。でもこれが気になり始めたら気になってプレイに集中出来ないので、そういう方はトゥルーバイパスの物がオススメですね。ただこれを入れると良んだよねって言われるエコープレックスみたいにプリアンプが常にオンの場合ですとトゥルーバイパスにしても意味がないので……、ON-OFFする物ですね。

    特にワウとかって音痩せ激しいじゃないですか。繋ぐだけで出力が下がりますし、ギターだけの時は問題ないと思いますが、バンドの中では繋ぐだけでヴォリュームが落ちて抜けて来ないのでそこを解消したいということで以前作ったのですが、こちらにも置いてあると思いますがどうですか?皆さんの反応は?

  3. 下:そうですね、明らかに違うんですよ。まず音痩せは感じないですね。他ブランドと比べて、踏み込んだ時の高域の耳障りな音が無く全体的に音が太い、レンジ幅もちょうど良い所だと思います。そして何といってもON-OFFが分かるLEDが付いている所ですかね。

  4. 鈴:ありがとうございます。ワウに関しましては沢山作ってきました。好きなワウサウンドって皆さん様々なんですよ。必ずしもこのワウが絶対ではないですが、統計上このワウが一番好まれてきました。レコーディングの時に色んなセッティングをしたワウを用意して行きましたが大抵このワウが採用となりますね!

  5. 下:近年ブースターの使い方に変化が見られますが……。

  6. 鈴:ブースターの使い方ってギターの音量を上げるという役目を持っていますが、私がプロの現場で良く見るのがONしっぱなしなんですよ、常に。要するにアンプで最良のサウンドを作っておきながら更にブースターを入れるみたいな、ブースターもアンプの一部的な使い方ですよね。じゃ、最初にアンプで最高のサウンドを作ってればブースターなんて要らないじゃんと思うでしょう?

    答えは、そうなんです!その通りなんです。最初はそれで良かったんですが、でもそこにブースターを使えば「あっ」ってなるんですよ。まさにエリックジョンソン的な考え方ですよね。ダンブル使ってるのにあれもこれも繋いじゃうみたいな感じですよね(笑)。でもブースターの使用率が凄い増えましたよね!少し前までその役割はバッファーでしたけどバッファーだと音質が変わってしまうので、皆さんブースターに移行してるのではないでしょうか?

  7. 下:今後の展開は如何でしょうか?

  8. 鈴:そうですね、製作途中ですが、今タッチワウみたいなのを作っていまして、それがちょっと歪むみたいなの……、正直Mutronですよ。これも要望が多い一つでMutronみたいなの欲しいんだけどと言われまして、「じゃMutron買えば良いじゃん」てとこなんですが、無いんですよ、あっても高くて買えないっすよってとこからじゃ作りますか!から2、3年経つんですけどやっと完成が見えてきました。これはまだあれなんですが、一応ギタリストに向けて作っていますね、もちろんベースにも使えますけど、でもちょっと高いんですよ。一応ハンドメイドなんで……。Mutronよりも少し荒っぽく掛かるので面白いですよ。

  9. 下:楽しみですね!鈴木さん、本日はどうもありがとうございました。

  10. 最後に鈴木氏はこんな言葉を残してくれました。
    「正直僕の作るエフェクターは一人で弾いてると、変化も少なく面白くないのかもしれません。でもアンサンブルで弾いてみてください、とてつもなく威力を発揮する道具の一つです」

    ミュージックランド、特にKEY渋谷店ではShin's Music製品を多数取り揃えております。その中にはミュージックランドオリジナルのShin's製品もございます。是非一度店頭にてサウンドを聞いてみてください。でも鈴木氏のおっしゃる通り、アンサンブルでの音抜けを想定して作られている事を忘れずに!