あらゆる観点から物を見つめ、どんな小さい事でも妥協せずサウンドを追求するFree The Tone 代表 林 幸宏氏、その姿勢には脱帽するばかり。
書籍『ギタリストとベーシストのためのシステム構築マニュアル』 も好評を博し、今後の商品に増々磨きがかかるFree The Tone。今回は代表の林 幸宏氏とミュージックランド 下田にて対談を行いました。
対談
Free The Tone
代表取締役
林 幸宏
×
MUSICLAND KEY
下田 紀彦

(L to R)
Free The Tone 林 氏
MUSIC LAND 下田
Free The Toneという名前はピートコーニッシュが付けてくれたんですよ
-
下田(以下、下):Free The Tone立ち上げの経緯を教えていただいて良いですか?
-
林:はい。以前日本ビクターで働いていまして、そこを辞めた後、ピートコーニッシュの元へギターシステムを学びに行きました。丁度、二男が誕生するタイミングで帰国し、パシフィクスの小会社として「Free The Tone」を立ち上げました。基本的にはプロミュージシャン向けのシステムとかカスタム品を製作したり、他にProvidence向けの製品を開発していました。
Free The Toneという名前はピートが付けてくれたんですよ。ちょうど私を空港に送ってくれる時にピートコーニッシュとリンダコーニッシュが「日本に帰ったら会社立ち上げるんだろ?」という会話の中で、リンダが何気ない普通の会話でシステムのトラブルの話しをしてたんですよ、その時にリンダが「システムはたった1本のケーブルの調子が悪ければ音が出なくなるのよ」って事を言っていて、その時にプラグを綺麗に拭いた方が良いとか、ケーブルを8の字に巻いた方が良いとか基本的な話しをしてたんですが、その話題の中で「Free The Tone」という言葉が会話の中から出て来たんです。「サウンドを解放してあげる」という意味なんですけど、そこでピートが「そのフレーズ良い表現だな」という事から「Free The Tone」が誕生する事となりました。日本に戻りパシフィクスの小会社としてFree The Toneを立ち上げ、そこから独立し今に至るという所です。
-
下:なるほど。でも何故いきなりピートコーニッシュの所に行ったのですか?
-
林:ピートとは1998年から交流があって、実はビクターに入る前にフリーでギターテックとしてレコーディングの仕事もしてたんですよ。SIAM SHADEのアルバムのIIIとかIVとか……。その当時、仕事としてピートの製品を使っていて、それこそユーザーの立場としてピートを知ってたんです。ビクターに入社した後もピートとは交流は続きました。私は新しいミキサーの設計をし、それをピートに自慢したり。逆にピートはデジタルの知識はあまりないので、例えば「回路でこういった制御をしたいけどどういった回路にすればいいのか?」などの質問を受け私が「こういった回路にすれば動くよ」といってデジタル部の回路図を書いてあげたりとかして技術的な交流をしていました。
ある日、ピートとギターシステムの話をしている時に、「ギターシステムについて深く知りたい」って言ったら、「学びに来ればいいじゃないかイギリスに!!」って声を掛けてくれて。私も「こんなタイミングを逃したら二度と来ないだろう」と思ってビクターを辞めピートの元に行く事となった訳です。
-
下:ピートコーニッシュの所では主に何をされていたのでしょう。
-
林:はい。システムを学ぶにはシステム製作するのが一番の勉強になるだろうとピートが提案してくれて、デモユニットを一から製作しました。MIDI制御出来てアナログ回路を切り替えて行く。これが布袋さんのシステムの大元となった物です。ピートの所では中身の濃い修行だったですよ。カスタム品をプロミュージシャンの為に作る重要性だとか、普通は気付かない位、小さな所までの配慮を学びました。その時は、なぜここまでしなきゃならないんだろう?と思った事もあったんですけど、10年位経ってようやく完璧に理解出来るようになりました。
個々の製品を単独で見ている訳ではなく、全体的に捉えようというのがフリーザトーンの基本姿勢
-
下:Free The Toneの概念を教えていただけますか?
-
林:Free The Toneのロゴの下に「The Holistic Approach To System Design」と書いてあるのですが、個々の製品を単独で見ている訳ではなく、全体的に捉えようというのがフリーザトーンの基本姿勢です。全体的に捉えながら、音を解き放つための手段を追求しようという概念ですね。
例えばエフェクターを作りました、そしたらそれがどの様に繋がれているかと言うふうに周りも見ていますね、ケーブル然りルーティングシステム然り。もっと言いますとギタリストだけが良いサウンドでもダメなんですよ、ベーシストや他のバンドメンバーのサウンドとのトータルバランスを考え、その中でFree The Toneの製品がどういった物だと楽しんでもらえるのか、つまりFree The Toneの製品は個々のサウンドでは無くトータルでのサウンドを追求していくという事ですね。