独自性に富んだデザインと確固たるサウンドを持つジャパンメイドブランド。
今やその名を知らない人は居ないほどのブランドである「320design」を生んだ代表のMr.320氏にお話を伺いました。
対談
320design 代表
Mr.320
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MUSICLAND KEY
下田 紀彦

(L to R)
320design Mr.320 氏
MUSIC LAND 下田
ちゃんとデザインとして昇華されたエフェクターを作りたかった
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下田(以下、下):今日はよろしくおねがいします。
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Mr.320(以下、3):よろしくおねがいします。
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下:まずお伺いしたいのは320designというブランドの経緯、なぜエフェクターを作り始めたのか。
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3:他のメーカーとそんなに変わらないと思いますよ。いわゆる「趣味が高じて」みたいなところです。
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下:もとから楽器業界に居たわけじゃないですよね?
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3:違いますね。それがなんでエフェクターを作ろうとしたのか……、身近にエフェクター作ってる人が居たんですよね。
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下:身近に?
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3:エンジニア的なことをやってる人が居て、自分はデザイナーとしてお手伝いしてたんです。そうしたらなんとなく自分でもやってみたくなったんですよ。それでその人に教わりながら作り始めたんです。
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下:それは何年くらい前の話ですか?
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3:多分10~11年くらい前だと思いますよ。
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下:では2007~2008年くらいに作り始めたと。320designというブランドを立ち上げたのは?
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3:320が立ち上がったのは10年くらい前かな。半ば趣味ですけどね。
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下:今も趣味?
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3:今も趣味(笑)。作り始めて結構すぐに320designと名乗ってたかな。
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下:それが大体2008年。
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3:エフェクターを作り始めた理由としては、納得いくものがなかったというのと面白いデザインのものがないって思ったんです。海外のエフェクターだとデザインで遊んでいるものもあったけど、当時の自分にはなんとなくナンセンスに感じた。外国の子供のらくがきみたいなものが結構あるじゃないですか。そういった中で工業製品然としたものではなく、ちゃんとデザインとして昇華されたエフェクターを作りたかった。当時はあまりそういうものはなかったんです。
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下:そうですね。
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3:デザインでインパクトがあったのはsobbatさんですかね。
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下:京都のエフェクターですね。
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3:あの時代にデザインとしてはインパクトあったなと。それで自分も見た目的にも面白いもの作りたいなって。
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下:納得いくものがないから自分で作り始めたというお話でしたが、それはデザインの他に音も?
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3:そうですね。音もですね。
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下:それで一番初めに作ったのが……。
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3:320は抜きにして……。いや、もう320って名乗ってるな。最初に作ったのが某メーカーのコピー。
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下:そのままじゃないですか(笑)
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3:仕上げは汚いけど、もうこの頃からノブを側面につけたかったんでしょうね。スイッチまで側面についてるし。
当時からオペアンプには入手困難なICを使ってた
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下:さきほどお話されてたエフェクターを作るノウハウを教わった方というのは、今も楽器業界でエフェクターを作られてるんですか?
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3:いや、メーカーとしてはやってません。今は九州の方でスタジオ経営されてるとか。
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下:そしてMr.320さんはその方から教わったノウハウを自分なりに解釈してエフェクター作りに落とし込んでいると。
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3:そうですね。まあ、自分で作り始めていきなりブランドとして最初からうまくやっていけるわけでもないですけど、ブランディングに苦労したっていう感じはそんなにないですよね。ポンっとナインボルトさんが320を見つけてくれて、取り扱ってくれました。
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下:はじめはホームページだけで売ってたりしたんですか?
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3:うーん……、ホームページ……。
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下:ナインボルトさんから声が掛かるということは、どこかしらで何かのモデルが世に出てたってことですよね?
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3:あー、ホームページ作ってましたね。
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下:一番はじめに販売したモデルってどれなんですか?
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3:LandmightyとSpecial Ultra Hard Onの2機種。
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下:これってあれですよね?
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3:あれですね。
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下:このミツバチとか……。
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3:見事にね(笑)。当時はこういうのをやってました。
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下:これらを自社のホームページで販売していて、それをナインボルトさんが目をつけて卸販売を始めたと。
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3:これもかなり初期のものですね。
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下:なんですかこれは?ファズ?
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3:BG AF-60というモデルで、某メーカーの古いファズ/ディストーションをコピーしたんですよ。
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下:これも販売してたんですか?
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3:これもいくつか販売してましたね。
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下:では流れ的にはLandmighty、Special Ultra Hard On、BG AF-60の流れですか?
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3:そうだったと記憶してますね。いや……、BG AF-60もかなり前だな。Brown Featherと同じ時期に作ってた……。
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下:記憶が曖昧ですか?(笑)
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3:曖昧ですね(笑)。とにかくこのシリーズ、自分で腐食やエンボスさせてたものは結構同じ時期なんですよね。あ、一番初めはLandmightyです。それに付随してSpecial Ultra Hard On。
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下:ここは間違いないんですね?
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3:うーん……、LandmightyとSpecial Ultra Hard Onの時間軸ちょっと忘れちゃいました。
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下:そうすると、その2機種の後にBrown Feather、BG AF-60ですか。となると当時はこの4機種が320の主な戦力だったってことですね。Brown Featherは今も人気のモデルですけど、初期型は今と全然形が違いますね。
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3:そうですね。Landmightyに関しては音も違うはずですよ。ICが違うからかな。当時からオペアンプには入手困難なIC使ってたんですよ。
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下:この4機種すべてIC変わってるんですか?
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3:いや、Landmightyだけですね。ICの入手が難しくなってきたから今は違うICを使ってます。だから、前とは音が違うはずですよ。前の方が音が軽めで丸かったんじゃないかな?
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下:こういう経緯を辿って形や中身も少しずつ変わってきたんですね。
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3:そうですね。卸販売を始めてから製作する量が増えてきたことでこのエンボス加工が本当にキツくて……。中身も全部手作りでやってたんで、当時は過労死するなって思いましたね。夜中の2時とか3時にハンダゴテ持ってやってるんですよ。その上、昼間も仕事するじゃないですか。もうこれダメだ死ぬなって思って一度卸販売やめたんです。
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下:そうなんですか。じゃあこのLandmightyは初期型ですよね。
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3:こちらのBG AF-60も売ってたりしたんですよ。
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下:これすごい大変そうですね。
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3:これが一番大変。これはマスキングして、溶かして、色塗って、そのあとに擦るとこういう感じになるんですよ。
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下:かっこいいですね。
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3:これ音もかっこいいですよ。
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下:本当ですか。すごいなこれ。
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3:でも、ケースのボツもいっぱい出るんですよ。下手すると10個作って5個ボツとか。
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下:それはなんでボツになるんですか?
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3:腐食しちゃってボロボロになっちゃったりとか、細かいところの掠れとか。これも綺麗とは言えない。
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下:あー薄いんですね。
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3:そうやって薄くなるのもあるんですよ。
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下:へー、これは大変だ。
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3:うん、大変だった。思い出したくもないくらい大変だった。