Introduction
1949年にF社初のソリッドギターとして発表、51年の名称変更を経てF社ギターの歴史の幕開けを飾ったTLモデル。59年中頃には従来のメイプル・1Pネックとは異なる指板にローズウッドを採用したモデルが登場。中でも62年頃までのごく僅かの期間に製作された「スラブ・ローズウッド・ネック」、「クレイ・ドットマーカー」、「8ホール・1プライ・ピックガード」仕様は、ヴィンテージ市場において50年代初期の通称ブラックガードに勝るとも劣らない人気を誇っています。
発売から現在に至るまで、ロック界のレジェンドであるJimmy Page、Keith Richardsをはじめ、Robben Fordも愛用するなど、ジャンルを越えて多くのギタリストに支持を受けるスラブ期のTL。今回の「Realdeal 1960 TL Perfect Reproduction」では、複数の個体から選りすぐりの1960年製TL (Serial #48427)の実機を基に徹底検証、再現しました。
Manufacturing Method
時を経て現代に蘇る製法
当時F社はネックとボディを別々に製作し、ネジのみで接合させる「デタッチャブル方式」という今では多くのメーカーが採用する画期的な製法を発明。作業効率化を図るには最も最適な構造と言われる一方、ネック、ボディ、パーツの選定から、熟練された切削技術、セッティングまで全てのファクターが合致しなければギターのポテンシャルを最大限に引き出す事が難しいとも言われています。
60年代特有の細身で手に馴染むシェイプをハンドシェイビングにて再現したネックは、ヘッド周辺のカーブ、ヘッドからネックにかけてのアウトラインまで忠実にサンプリング。またネックの剛性を高めるべく、トラスロッドには一般的に国内で使用されるものより細く撓りの良いものを採用。仕込み用に専用の加工刃物まで準備し、ロッドのピークポイントを計算、しっかり湾曲させ船底型の溝に仕込んでいます。さらにロッドナットは指板に密着させ、指板面と平行に仕込むことにより、ヴィンテージ同様の高い強度を持つスラブ・ボードを実現しています。
通称「クレイドット」と呼ばれる指板のポジションマークは、バルカンファイバー材を厳選しヴィンテージと同サイズにて製作した弊社の特注品。
フレット溝の切り方や、フレットの仕込み技術からもわかるように、今以上に手間が掛けられていた当時のフレット処理。本モデルでも1弦側フレットのナイフエッジ処理まで緻密に再現しています。
ボディではアウトラインはもちろん、サウンドに大きく影響するネックジョイント溝、ピックアップ、コントロールキャビティ部のサイズまで精密にトレース。また、通称「ネイルホール」と呼ばれる治具穴を分析し、当時に限りなく近い製法を再現しています。
「鳴り」を追求した拘りの接着、塗装方法
近年では手軽に入手可能かつ扱いが容易な点から木工用ボンドによる接着が主流ですが、これにより弦振動を損なう事も少なくありません。昨今、再び取り入れられることも増えてきたハイドグルー(にかわ)接着は、古くはヨーロッパから長い歴史があり、高級家具、工芸品や様々な弦楽器にも用いられ、木の接着においては木工用ボンドよりも接着面が強固かつ劣化しにくいことが証明されています。
この伝統的なハイドグルー接着をもとに弊社では長年の研究を重ね、より強度の高い独自の接着方法「F.A.H.A」を完成させました。湯煎や温度管理の必要性があるハイドグルー接着より、さらに手間と技術を要する接着方法です。指板、トラスロッド溝に「F.A.H.A」を採用することにより、接着部分はより強固になり、ネックからボディへの弦振動をダイレクトに伝え、サウンドにも多大な影響をもたらすことに成功しています。
ルックスはもちろん、サウンドにも直結する塗装方法。レオが当時、工場に指定していたアッシュボディの目止め剤に着目。独自の溶剤を木部の導管に擦り込む事により、ヴィンテージ特有の発色と質感を再現。その他の塗装個所にはポリサフェーサーは使用せず、 当時のラッカー成分に近い塗料を下地からニトロセルロースラッカーにて塗装。オールラッカーと言えど、近年はポリサフェーサーを使用するラッカーが多く存在しますが、木の鳴りを充分に活かす為にこの方法は欠かせません。
Selected Material
しっかり熟成し、厳選された木材
近年は楽器として使用可能になるまでの時間短縮のため、乾燥釜で一気に含水率のみを調整した材を使用するメーカーが多くなってきています。これにより、銘木を使った高級楽器自体は意外と入手しやすい傾向にありますが、当プロジェクトの様に木材の熟成まで考えて組上げられたギターを入手することは実は容易ではありません。
母体となるボディには約30年前からシーズニングを施したアッシュ材を使用。ボディ材の木裏/木表を計算しヴィンテージ実機に近しい重量の個体を厳選。60年代頃に使用されていたアッシュ材はオフセット方式での2Pボディが多く見られますが、1Pボディを採用しています。ネック材もシーズニングをしっかり済ませたハードメイプル材をヴィンテージ同様に重量や杢目にも拘った板目材にて使用。
指板材には、北米で長い年月をかけて育った太く大きい丸太=(オールドグロウス)から切り出されたハカランダを一枚ずつタッピングし、硬質でより金属のような響きを持った選りすぐりの材のみを選定。現代のローズウッドでは味わうことの出来ない希少材です。
形状から素材まで徹底的に拘ったハードウェアパーツ群
この年代を象徴する「8ホール・1プライ・ピックガード」は、厚みや素材までも完全再現。ノブは57年頃から見られるアルミ素材のフラットノブ、トップハット型のスイッチノブ。その他、細かいパーツ等もヴィンテージ同様の型、素材の物を選択しています。
ブリッジは58年頃から60年初頭にのみ見られるトップローディング(弦の表通し)仕様まで再現。
トラスロッドはヴィンテージと同規格のオリジナル。フレットには1980年代のJimdunlop #6190のNOS品(数量限定)を使用し、さらにフレットの硬度を高めるべく、弊社独自の特殊な「硬化処理」を施しました。
ペグはポストからウォームギア、ワッシャーまでブラス素材を採用し、当時搭載されていたKlusonペグの音響特性に近しい仕様となっています。
ジャックには硬度もメッキの厚味も現行のスイッチクラフトとは一線を画すデッドストック品を使用。全ての配線材とハンダにもヴィンテージ・マテリアルを使用しています。
Pickups
K&T T-61SF Plus w/Belden vintage wire
50年代までのN極トップから一転してS極トップへと仕様を変更した60年代のPUを再現。ブラックボビンにSuper Fatコイルを採用。皮膜の厚い物により、ただスペースが必要なだけではなく、コイル本体のバネ性が高くワインディングに技術と熟練を要します。リード線には弊社が独自入手した希少な56年製Vintage Belden材を使用しました。
一層向上したレスポンス、分離感、高域の抜け、張りのある低域。数々のヴィンテージ実機に搭載されていたPUをプロファイリングして製作された、作業性もコストも度外視した更なる高みを目指した特別仕様です。
※Agedモデルには、ポールピースのエイジド加工に加え、高野氏が着磁器による磁力のコントロールを施した「T-61SF Plus AGED」を搭載。
※一部ヴィンテージパーツに関しては数に限りがあるため、変更となる場合があります。
1960 TL Perfect Reproduction
¥498,000- (tax included)
Aged model
¥598,000- (tax included)
『生産休止中』となっております。
画像はAged modelです。
Specifications
- Body : Ash 1P
- Neck : Hard Maple
- Fingerboard : Brazilian Rosewood (Slab Board) / 184R
- Position Inlays : Clay Dot
- Scale length : 25 1/2" (647.7mm)
- Nut : Non Remove Fat, Non Bleached Bone Nut
- Fret : JimDunlop #6190 (Vintage) / 21F
- Machine Head : KEY'STONE FS-DLX/NICKEL 6
- Tuner Bushings : Steel Tuner Bushings/Nickel 6
- Pickups :K&T T-61SF Plus w/Belden vintage wire (Non-Aged model)
K&T T-61SF Plus AGED w/Belden vintage wire (Aged model) - Bridge : '60s Clone TL Spiral Bridge
- Controls : 1 Volume, 1 Tone, 3 pos Switch / CTS 250KΩ
- Output Jack : Switchcraft L-11 / NOS Vintage Mono Jack (made by Raytheon)
- Finish : Special Lacquer Finish
- Case : Hardcase
Color Variations
Blonde / Aged
White Blonde
White Blonde / Aged