Mattias "IA" Eklundh (Freak Kitchen)

スウェーデンの超絶トリオバンドFreak Kitchenのギタリストとして活動するMattias "IA" Eklundh

Caparison Guitarsのエンドーサーであり、自身のシグネチャーモデル「Apple Horn」を駆使し、その類い稀なテクニックと独特のアプローチで絶大な支持を得ているMattias "IA" Eklundh氏をKEY渋谷店で行われたギタークリニック終了後に直撃。色々な質問をしてきました。

対談

Freak Kitchen
Mattias
"IA" Eklundh

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MUSICLAND KEY
下田 紀彦

(L to R)
Mattias "IA" Eklundh 氏
MUSIC LAND 下田

ギターがもっと弾いてくれと言ってる様な気がする、そして全体のバランスが良い

  1. 下田(以下、下):Caparison Guitarを使用するようになった経緯を教えてください。

  2. Mattias "IA" Eklundh(以下、マ):最初の来日、あれはFreak Kitchenのセカンドアルバムのプロモーションの時だから1996年、その時誰だったか今は憶えていないけど、 リッチーブラックモアのBarに連れて行ってもらったんです。そこで色々話しをしている時にギターの話題になり、その時今使っているギターがどういうモデルでどういう仕様でという話しをしていたんだけれど、その話しの中で日本で良いギターを作っている人がいるから紹介してあげるよと言われ紹介してもらったのが菅野さん(Caparison Guitars デザイナー)だったんですよ。

    そして後日、菅野さんとホテルで打ち合わせをする事になり、その時に持って来てたギターを手にとり弾いた時に良いギターだなという感触を覚え、でもその時は何もなく帰国する事になりました。

    それからスウェーデンに戻った私は好印象だったギターが頭の中によぎり、菅野さんに連絡を入れました。当時はEメールも普及してない時代ですので、手紙でのやりとりで話しを進めて行きました。私の要望を菅野さんに告げ、まずはシグネチャーを製作する前にカスタムモデルを作ってみようかという話しで始まった第一号機が黄色のApple Horn。これがかなり私の中で印象が良く、ここからCaparison Guitarと私の距離がグッと近づいて行きました。

    それから緑のモデルだったり色々なギターをスウェーデンに送ってもらい、いよいよシグネチャーモデルの製作に取りかかるわけなんですが……、あれは確か池袋で楽器フェアがある時に来日して、そこで始めてシグネチャーモデルを使用しました。グレーのSand Stormというカラーでしたね。それから私の所に色んな楽器メーカーから自分の所のギターを使ってくれとオファーが来ましたが、私は一貫してCaparison Guitarを使い続けました。中にはお金の話しも出ましたが、私が大切にしてるのはロイヤリティと自分というのがポリシーであるからです。

  3. 下:チューニングは下げているんですよね?弦のゲージっていくつでしたっけ?

  4. マ:正直ギターのディテールは詳しくはありません。どんな材が良いとか、このパーツを使用すると良いとかは分からない事が多いです。全て管野さんにお任せです。私が感じるCaparison Guitarはまず、アコースティカルなサウンドがする、そしてギターがもっと弾いてくれと言ってる様な気がする、そして全体のバランスが良い。

    今回8弦のギターを新しく製作していただきましたが、通常8弦となるとボディとネックのバランスが悪かったり、立ち上がって弾いた時の感覚が今イチだったりするのですが、Caparison Guitarは私の持ってる全てのギターに言える事ですが、違和感無くプレイする事が出来る。私はツアーに出て行く事が多いですが、Caparisonのギターはどこの国に行こうが、どの季節でも常に安定したサウンドが出て信頼性が高い所が良いですね。

    8弦、27フレット、非対称ボディ形状を採用したMattias “IA” Eklundhの新たなシグネチャーモデル「Caparison Apple Horn 8」

8弦ギターはあらゆる可能性を秘めたモデルだと思います

  1. 下:これまでのシグネーチャーモデルは全て6弦ですが、今回何故7弦ではなく8弦だったのでしょう?

  2. マ:まず、自分にとって7弦ギターはあまり意味が無い物だと思っています。と言うのは6弦に対して7弦目はBのチューニングで1本増えるわけなんですけど、例えば自分の場合ですとBでなく楽曲から色々考えるとB♭-13にします。自分にとって7弦のチューニングでは自分の楽曲にしっくりこないんですよ。ただ8弦になってくると単純に7弦に1本弦が増える事ではなく全く別の物なんですよ。機能が増えるというか理に適った物になってきて、一気に可能性が増えて、そして発想力も増えて、曲作りの時の想像力や刺激も8弦ギターを手にする事によって色んな可能性を得る事が出来て、自分には機能的なギターに一気に変わりますね。更にこの8弦モデルはTrue Temperamentフレットシステムを導入していまして色んなサウンド正確にストレス無く出てくれる所がメリットとしてあり、この組み合わせが可能性を一気に広げてくれるアイテムだと思います。

    Guthrie Govan(ガスリー・ゴーバン)も8弦ギターを使用していて、以前彼と話した時に「7弦は意味は無いけど8弦だったらいいね」と、やはり自分と同じ意見を持っている人がここにもいるという事からも8弦ギターはあらゆる可能性を秘めたモデルだと思います。

  3. 下:True Temperamentフレットシステムは以前のApple Horn Yellowの頃から搭載されていますが、これはどういった経緯で使用されたのでしょうか?

  4. マ:以前使用していたCaparisonでグレーのSand Stormの頃に先方から「うちのフレットを使ってみないか?」とオファーがあり、その時に色々説明を聞き、それじゃという事でギターを送りフレットを付けてもらいました。

    あれは確かベートーベンのオーケストラでプレイするライブが控えていて、本番近くになった頃にフレットを交換したギターが出来上がってきました。それまで通常のフレットでリハーサルも全て行ってきてましたので、この曲がったフレットでまともに弾けるのかとかなり不安だったのですが、実際弾いてみると以外とすんなりとプレイ出来るしピッチ感も良い、今までの真っすぐなフレットのギターは構造上、数学的に計算してもハーモニクスの場所、ピッチが絶対ズレてくるものだったのに対して、このフレットは特定のズレる場所を割り出し正確なピッチを提供してくれる初めてのシステムという事で、これは自分にとってかなり良いなと思い、この事を菅野さんに伝えお願いして自分のシグネーチャーモデルに採用しました。これによって今まで真っすぐのフレットに戻れなくなり今ではこのTrue Temperamentフレットシステムばかり使用しています。

    このTrue Temperamentフレットシステムはストックホルムの会社なんですけど、これがアメリカだろうが、日本だろが私はこのシステムを使っていると思いますよ。

  5. 下:まだ日本ではこのシステムは一般的には浸透はしていませんがスウェーデンの方では既にポピュラーな物なのでしょうか?

  6. マ:いや、スウェーデンの方でもポピュラーではありませんが、それでも自分が使用する事で「そのフレットは何なんだ?」という反響は沢山有ります。それで少しずつですが浸透してきてて、それこそ自分だけでなくSteve Vai(スティーヴ・ヴァイ)やJohn McLaughlin(ジョン・マクラフリン)等、有名なアーティストが使用する事により少しずつ浸透してはいますが、それでもまだまだポピュラーでは有りませんね。そこにはコスト的な問題が大きく有り、このフレットを搭載したギターはコストがかかり、もちろん色んなメーカーも搭載を考えてはいるのですが、コスト的な問題で発売に至らない場合が殆どですね。

自宅で同じ繰り返しの練習をするよりも人前に出てアドリブでギターを弾く方が何年分の価値がある練習

  1. 下:今度はマティアス自身についての質問です。今もギターの練習はしていますか?

  2. マ:10代の頃は一日10時間位していましたが、現在は全く触らない日もありますし、レコーディングの日は1日5時間位弾きますし、今はそれよりも曲、音楽を理解するということの方が大事だと考えていまして、アイデアとかその曲に対するアプローチを重視しています。これはあくまでも基礎練習が出来ていると仮定しての話ですが、最近の若い方はテクニックばかりを追っていて大事な曲のアプローチだとかその曲の理解度が欠けている様に感じます。

    私も昔はギターの練習をよくしていましたが、曲のアイデアが出来るまでは敢えてギターを弾かない様にしてみるとか曲の全体像が出来てからギターを握るというようにイマジネーションを頭の中に描きそれを音にするという練習といいますか、形にする事をしています。今回もこの様なクリニックを行わさせていただきましたが、自宅で同じ繰り返しの練習をするよりも人前に出てアドリブでギターを弾く方が何年分の価値がある練習だと思っています。

  3. 下:なるほど、でもそれはマティアスだから言える事でしょうね(笑)。逆にプロでない方、私も含め通常はどのような練習をするのが効果的だと考えてますか?

  4. マ:そうですね、練習方法は人によって様々だと思いますが、私が考える効果的な練習は自分が弾いた曲だとかフレーズを録音し聞き直してみるという事ですね。上手く弾けたと思ったフレーズも後で聞き直してみると案外そうでもなかったりするので、それを何度もトライする事ですね。後は他の人とセッションする事ですね。この練習が最も効果的で、まず自分の立ち位置がどこでどの様に自分が入って行くのか、又どういうサウンドでどの尺で入って終わるのか、全てが凝縮した練習だと思います。一人で家で練習していても絶対にカバー出来ない感覚があって、実際に肌で音を感じる事が大事だと思います。

    今回のクリニックでも話しましたがリズムがかなり重要で、8ビートがあったり変則なビートがあったりと、基本のビートの中でインドのリズムが入ったりとかそういう練習は実際バンドの中だったりセッションの中で養われるものだと思います。

  5. 下:ありがとうございます。最後に日本の皆さんにメッセージを頂けないでしょうか?

  6. マ:OK、少し前までは私もニューギターヒーローなんて呼ばれていましたが、もう私も歳ですよ。中々次世代のギターヒーローが出て来ないのがとても残念だ。是非とも新しいジャンルを開拓し、そしてオリジナリティを持った次世代のギターヒーローが出てくるのを楽しみに待ってるよ!!

  7. 下:今日はどうもありがとうございました。

  8. マ:ありがとうございました。