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対談リスト

ここではメーカーや正規代理店に当店スタッフが製品説明には書けない、より詳細に迫った説明、又正規代理店さんの商品に対する熱意を語って頂いております。普段聞けないお話しばかりですのでごゆっくりご覧ください。

対談 (株)ハリーズエンジニアリング 代表取締役 戸谷 達明 × MUSICLAND KEY新宿店 田辺 洋太郎

  • Musicland 田辺(以下、田) : 今日は宜しくお願いします。

  • (株)ハリーズエンジニアリング 戸谷(以下、戸) : よろしくお願いいたします。

  • 田 : まず、戸谷さんの経歴を簡単に教えて下さい。

  • 戸 : ずーっとサッカーばかりしてたんですが、映画、音楽が大好きでレコード買いまくってました。中学生の頃からギターの構造に興味が湧いて、貰ってきたギターを分解してました。中2で初めて買ったギターは赤いストラトタイプでしたが、初めから改造目的でした。フロイトローズの原型のユニットをエディが使い出したという記事を見てアルミのブロックを削ってロッキングトレモロの出来損ないみたいなものをつくってそのギターに乗せたりしてました(笑)

    高校3年時に進学から就職に進路を変えるにあたって、サッカーでの人生を諦め何があるかのと考えた時に、映画かギター製造の2択でした。それでギターメーカーの求人を調べたらリペア、製造での求人があり、ギター製造を選びに木工大学に入ったつもりで某楽器メーカーに入社しました。ギター製造研修という形で今は無きマツモク工業へ出向し、製造部門で働きました。その後、会社の都合が代わり営業部門へ配属になりました。

  • 田 : そこからハリーズ立ち上げまでは?

  • 戸 : その後5年ほどで会社を辞めて、もともとアメリカが大好きだったので、1年ほどアメリカで生活しておりました。帰国したころ、ちょうど、元の会社の先輩や同僚が続々と独立して起業していっているタイミングで。それで、「うちの仕事手伝ってくれないか?」っていう形でオファーがあり、僕が営業販売会社としてハリーズの原型を立ち上げました。それから4、5年くらいは 卸問屋として営業販売していましたね。単に取り扱い会社としてではなくて、メーカーと一緒にいろいろ商品のコンセプトを練り営業していました。

    やっぱり自社のブランドとしてギターを作りたいと、ずーっと思っていまして、満を持した!という形でハリーズ設立5年くらい経ったころ、元シェクターの高瀬をチーフにして大阪で工房を立ち上げました。少しずつdragonflyのギターを作り始めました。その後、工房を東京に移したときに、営業販売をしていた 「ハリーズ」という会社のイメージを「物を作っている会社」というイメージに切り替えていきたかったので、社名も「ハリーズ」から「ハリーズ エンジニアリング」に変更しました。

  • 田 : 当時のdragonflyのブランドの方向性というか、コンセプトみたいなものはありましたか?

  • 戸 : 当時はTom AndersonやJames Tylerなどのカスタムブランドなどが人気がありましたし、製造チーフが元シェクターということもあり、国産でそれらを凌げるハイエンドなハイスピードなギターを作りたいなと、お客さんもそういうギターを求めているんじゃないかと思いまして、当初はそういうUSAのカスタムブランドを意識していました。

  • 田 : 初めて製品化したのはどのモデルですか?

  • 戸 : HI STAという、いわゆるディンキーシェイプのモデルですね。22フレットで、当時から指板アールは400Rにしようと思っていて、グリップは薄めにして。トレモロユニットは当時のゴトーの2点支持タイプのものを自社で削ってナイフエッジにして、いわゆるアメスタのブリッジのようなものに加工していましたね。今でこそ当たり前になっていますけど、当時はアームの高さやトルクが調整できるものもゴトーには無かったので、そういった加工も自社で行ってギターに搭載していました。

  • 田 : そのHI STAも今でも定番モデルとなっていますけど、その後のモデルもMAROONやBORDER、ベースのSJなど個性的なシェイプが多いですが、こういった製品のデザインは?

  • 戸 : デザインは全部僕が行っていますよ。昔から自分でギターをデザインするのが好きでdragonflyを始めたので。今でもうちの会社の若い連中がギターをデザインしたりとかしてきますけど、全部却下していますから(笑)何でそんなおいしい仕事をとられなきゃいけないんだって(笑)

  • 田 : そういったデザインをするときに心がけていることってありますか?

  • 戸 : まあ、バランスですかね?持ったときのバランスもそうだし、音のバランスもそうだし、ルックスとか雰囲気も。

  • エレキギターのデザインって、やっぱりみんなFenderとかGibsonのルックスに慣れてしまってるんで、、製造側の方がそこから逃れられない。どうしてもかっこ悪く見えたりするんですけど。Fenderとかの元ビルダーが独立してブランド立ち上げてオリジナルデザインのモデル作ってますけど、、 苦労してるなー大変なんだろうな〜とか思いますけどね。

    まあ色んなデザインを参考にしつつ、オリジナル性を出せるようにしていますね。エルボーカットとかも、斜めに落とすんじゃ なくて、肘の当たるところの角のアールを大きくしたりしているんですけど、それをやり始めてみたらアコースティック業界とかでも近いデザインのものが出てきたので、方向性としてはあながち間違ってなかったんだな〜と思ったりしていますね。

  • 田 : dragonflyの楽器って、ピッチが非常に正確で安定していて綺麗に響く印象があるのですが、この辺の秘密って何かありますか?

  • 戸 : 当初からフレットはステンレスを使いたいなと思っていまして。フレットはすり合わせをしたり使っていると頂点が削れてくるし、それによってハイポジションでのピッチも合わなくなってくるし、とにかくフレットのコンディションを作った時の状態から変えたくないなと。

    フレットのコンディションさえ作ったときのバランスを保つことが出来れば、おのずとピッチも良くなるだろうと思って、そうするならばフレットは硬いほうが良いから、ステンレスが良いだろうと。

  • ということでステンレスフレットを作ってもらったんですけど、当初作ってもらったステンレスフレットはあまりにも硬すぎて、フレット作る業者も機械が壊れちゃうので、勘弁してくださいと。それでその後もう少しやわらかいステンレスになったんですけど。で、やっぱりそのフレットだとまだちょっとやわらかかったんで、フレットにクライオジェニック処理(※)をしようと。

    (※)クライオジェニック処理…金属等の素材を-196℃以下の超低温まで冷やすことで、分子配列を整え 強度や特性を向上させる技術。

    で、クライオ処理をする業者も、もともとクライオ処理は電子パーツよりもハードウェアなどの金属パーツの表面硬度を上げるために開発された技術なので、良いんじゃないですかと。ただ、処理をする時間でも効果が変わってくるので、うちはその辺も踏まえてバランスの良い状態にしていますね。あまり長い時間処理をすると硬くなりすぎてしまうので。この辺は企業秘密ですけど。

    あとは、フレットのサイズもピッチに関係していて、ヴィンテージタイプの背が低くて幅が狭いフレットが一番ピッチは正確になるんですけど、まあ低いとちょっと弾きづらいし。かと言ってジャンボフレットみたいに大きいやつは、幅が広くなる分フレットの頂点がずれてくるので、ピッチもちょっと曖昧になってくるので。現状では国産の214番というサイズのものが程よく背が高くて幅も狭いので、それを使用しています。

  • 田 : よくステンレスフレットは加工が大変だと聞くのですが、実際のところ作る側の気持ちとしてはいかがですか?

  • 戸 : 当初、フレットが硬すぎるときは、フレットを打ったりするときもうまく曲がってくれないのでフレットの端が浮いてしまったりかなり苦労しまして、それはアールをつける治具(じぐ)を見直したり、クライオ処理の時間なども試行錯誤して何とか収まりがついたんですけど。それでもフレットサイドの処理とか、普通のニッケルシルバーのフレットを削ったりする時間と比べると何倍も時間がかかるんで確かに大変ですね。うちの場合は大手のメーカーほどの本数を作っていないので、まあ何とかそこに多少時間をかけられるからやっているっていう感じですね。量産の工場なんかじゃとても無理だと思いますよ。やりたがらないと思う。

  • 田 : このステンレスフレットになってから、ユーザーやアーティストからフレットの交換やすり合わせの依頼はどれくらいありますか?

  • 戸 : 以前にニッケルのフレットを使っていた時はありましたけど、ステンレスにしてからは殆ど無いですね。アーティストからもフレットの交換をしたいっていう連絡は全然来ないですね。ニッケルのときはすり合わせで修理代もらって喜んだりしていましたけど(笑)今は全然ですね。

  • 田 : 仕様で言えば、パーフェローの指板材などもdragonflyの特徴の一つだと思うのですが。

  • 戸 : 20年位前、最初はそれこそハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)使いたいな〜なんて思っていたんですけど、まあ高いし、供給も無いし。で、材木屋さんから「パーフェローなら用意できますよ」って言われて。パーフェローなら普通のインディアン・ローズウッドよりも硬いし、ネックの剛性にも良いかなと思って。指板の色が薄くなってしまうのが難点と言えば難点なんですが、それ以外はすごく良い材ですね。

    ただもうパーフェローも供給がやばくて。3年位前からもうやばいとは言われていたんですけど。今年に入ってからもう「来年からは供給できるかお約束は出来ません」なんて言われて、ちょっと考えなきゃいけないなあとは思っているんですけどね。

  • 田 : ギターの666やB6、ベースの345など独特なスケールを取り入れていますが、何故こういった仕様が生まれたのでしょう?

  • 戸 : 最初は15〜6年前に、B6っていう792mmのモデルを作ったんですけど。当時アメリカでラウドロックのシーンが盛り上がっていて、7弦ギターとかも流行っていたんですけど、7弦に慣れてないギタリストは6弦の普通のギターで太い弦を張ってチューニングを下げて7弦と同じ音程で使ったりしていて。ただそれだとレコーディングでピッチが全然使い物にならないと。他のブランドでバリトンギターとかもあるにはあったんですけど、ホロウボディで柔らかい音のものだったり、とてもラウドロックでは使えないようなもので。そんなことをギタリストの引田寿徳から相談を受けまして、じゃあ単純にスケールの長いギターを作ったらいいんじゃないかと思いまして。

    うちの会社にフレットレスのプレベのネックがあったので、それを加工してスケールはじき出して仮のネックを作ってたんです。ぎりぎりコードが弾けて通常の弦が使える、それが792mmでした。ちょうどジャガーとかのショートスケールのナットの向うにマイナス5フレット分長くした感じです。

  • それで792mmスケールで27フレットのB6っていうモデルと、ハイポジションはそんなに弾かないっていう人が多いだろうからジョイント位置をもう少しヘッド側にずらして22フレットにしたZONE-Bっていうモデルを作ったんです。しかしまあこれだとどうせ弾きにくいだろうなと思いまして(笑)B6の792mmのスケールのネックに3カポした状態と同じようなスケールの交換用ネックを作ろうと思って、そしたらそのスケールが計算上666mmだったんですね。で、実は僕が持っている昔のクラシックギターのスケールでも666mmのやつがあって、じゃあもともと昔からあったスケールなら弾けないことも無いんだろうなって思って。ということで、当初666はB6の交換用のアタッチメントネックとして作ったんです。

  • 田 : それが結果として国内のラウドロックのブームに重なったんですかね。

  • 戸 : 確か最初は今の666の原型になるような、HI STAシェイプの666のプロトタイプを作って、それを国内のアーティストのレコーディング現場に持っていって知り合いのギターテックの方に渡したんだと思いますね。そこから色んなアーティストのレコーディング現場に広まっていって、色んな意見を取り入れながら今の形になっていったんですね。だから、B6も666も、現場の意見から生まれていったギターですね。

    もともとB6も、「7弦ギターの代わりになる6弦ギター」っていうところから始まったんですけど、あまりラウドロックに拘って作ったと言うわけではなくて、「グランドピアノみたいなギター」にしたいと思ったんですね。グランドピアノとアップライトピアノって、同じ音程でも張ってある弦の長さが違うから、やっぱりグランドピアノの方が弦の振幅も大きく倍音も出るし、豊かな音になるので。そういうニュアンスでB6を作って、その派生モデルとして666が生まれたんですね。

  • 田 : ピックアップやプリアンプなどもオリジナルのものを採用していますが、既製品のピックアップではなくオリジナルにしている理由は?

  • 戸 : 本来ギターメーカーっていうのは、ピックアップも含めて総合的にギター全体を自社で作るべきだと僕は思っていて。GibsonやFenderやPRSだってそうだし。しかし日本ではなかなかそういうブランドは無くて。国内のピックアップ製造をやっている会社に依頼するか、既製品を使うかで。うちの会社もさすがにピックアップを巻く技術も無いので、最初は国内の会社にお願いして作ってもらっていました。

    それで、シングルコイルに関しては当初からうちのスタッフがシェクターなどのクウォーターパウンドのピックアップが好きだったし、僕もポールピースは幅が広くて弦の振幅をしっかりカバー出来るほうが良いと思っていたので、そのタイプにしようと。ただし、カバーは一般的なシングルコイルのサイズに収めようと思って。

    一般的なクウォーターパウンドのピックアップはコイルがむき出しで、ピックが当たったりしてトラブルになる可能性もあるし、イメージ的にもどうしてもハードロックっぽい世界に行き過ぎてしまうので、ルックスはFenderっぽく、よく見るとポールピースが大きくて、パワーもある、と言う感じで作ったんです。なんだかんだそのままの仕様でもう20年くらい使っていますね。

  • で、ハムバッカーも当初は同じ国内の会社で作ってもらっていたんですけど、なかなか思い通りの音にならなくて。何でなんだろうと思って色々調べてみたら、コイルのワイヤーが違うと。アメリカで作っているピックアップのワイヤーは日本のものと素材も太さも違うようで。かといって日本にそのワイヤーを輸入してきて作ってもらうにしても、コストがかかりすぎてしまうので現実的ではなくて。それで結果的に海外での製造にしました。そこはコイルのワイヤーはアメリカのものを使っているということだったので、現地に行って何個もサンプルを作ってもらって音決めをして、以来そこでハムバッカーは作ってもらっていますね。

    まあ正直な話、コストを抑えたいから自社パーツにしているっていうのもあるんですけど(笑)でもそこが結構大事で、要はブランド物のピックアップを使うとピックアップの値段が高くてギター本体の値段にピックアップの値段が結構上乗せされてしまうので、それは避けたかったんですよね。あとはお客さんが自分で好きなピックアップに乗せ変えてもらっても良いので。けれど、シングルコイルもハムバッカーももう長いこと同じものを使っていますけど、割と受け入れてもらっているので、まあそのままでも良いかなと。

    ハムバッカーはもう少し歪んでくれるやつが欲しいっていう声もあるので、最近また試作していますけどね。

  • 田 : ベースのプリアンプも自社で作っていますよね?ブースト/カットのレベルも他社とはちょっと違いますけど。

  • 戸 : それもまあコストの問題もあるんですけどね。あれはうちのスタッフにプリアンプの回路が作れるやつがいるんですけど、ベースのプリアンプって既に良いとされている回路が色々あるので、そういうのをいくつかサンプル作って色々試していたんですね。それである時、うちのベースを使ってくれているFIRE(松田"FIRE"卓己 氏)から、「そんなにブーストレベルを大きくしても結局使わないので、もう少しポイントを絞ったやつが良い」って言われて。

    あとプリアンプのスイッチをON/OFFしたときに、音質や音量に殆ど差が無い状態にして欲しいっていうニーズもあったので、それで回路をもう一度徹底的に見直して、改良していったのが今のプリアンプですね。

  • 田 : 実際に現場の声で使用が決まっていったんですね。

  • 戸 : そうですね。それをアウトボード化してweedでBePeeという製品にしたんですけど、人によっては効きが弱いと感じるかもしれません。でもうちの場合は、派手な音のプリアンプもそれはそれで面白いですけど、実際にそこまでブーストしないと言う意見が多かったので、音質と、S/N比と、ONにしたときのレベル差ができるだけないように、ということを考えて作っています。

  • 基盤のサイズも、他のメーカーのプリアンプはジャズベのコントロールに納まるように凄く小さく作っているところが多いんですけど、うちはもともと自社の製品に載せる前提なのでその必要も無いですし、まあそこまでの技術も無いので(笑)音質とかクォリティーを考えたら基盤もある程度大きいほうが良いと思うんですけどね。だから自社で出来ているっていうのはありますね。ポットも基盤一体型にはしていないので、ポットの位置も自由が利きますし。

  • 田 : ベースに組み込むときのコントロールの位置も自由に変えられると。

  • 戸 : 木工をする上で問題が無い範囲なら対応できますね。

  • 田 : 今日も工房で見せて頂きましたけど、カスタムモデルで使用するエキゾチックな木材も非常にユニークですよね。こういった木材は何処で見つけてくるのですか?

  • 戸 : ギターでよく使う木材っていうのは、楽器用の木材を扱っている有名な材木屋さんが幾つかあるので、そこで製材されて楽器用の材としてきっちり管理されたものを使っていますけど。

  • ただああいうエキゾチックな変わった木材は楽器用の材木屋さんには当然無くて。でも昔から家具なんかではよく使われているものなので、そういう木材を扱っている「銘木屋さん」みたいな会社が実はいっぱいあるんですよ。それこそ中学生の頃からそういう材木屋さんに行くのは好きだったので、定期的に自分で見に行って、「何かある?」って聞いたら色々出てくるので。

    アメリカだと住宅とかでも日本よりもいっぱい木を使うので、北カリフォルニアとかにそういう面白い木を扱っている材木屋さんがあって、年に1回くらいアメリカ行ったときにはそこにも寄って買っていったりしますけどね。けれど僕は「地産地消」じゃないですけど、出来るだけ国産の木を使いたいなと思っていて。

    栃の木なんかは海外ではホースチェスナットとか呼ばれていますけど、昔から日本では銘木と呼ばれていて、家具とか床の間に飾られていたりするんですけど、そういう家具では使えないようなサイズでもギターに使うには丁度良かったりするので、なるべくそういう材を使うようにしていますね。

    黒柿も銘木の中の銘木で、すごく値段も高いんですけど、エキゾチックな木目で凄くカッコ良いので使っているんですけどね。黒柿は割れたり腐ったりとか、なかなか使える状態のものが少なくて大変なんですけど。まあそういう吉野杉とか、栃の木とか、黒柿とか、桜とか日本の木を使い始めたら、最近は他のブランドにも少なからず影響を与えているのかなって思っていますけどね。

  • 田 : 近年は特にラウドロックシーンで活躍するバンドの多くがdragonflyを使用していますけれど、そういったアーティストに支持されている理由は何だと思いますか?

  • 戸 : まあ、事務所が近いからじゃないですかね?色々融通は利かせますし。アーティストが楽器持ってきてすぐ何とかしてくれ、って言われたらまあ何とかしますから。そういうスピードじゃないですかね?

  • 田 : 対応面ももちろんそうだと思うんですけど、でもやっぱりdragonflyの楽器そのものも、その楽器を選ぶ理由っていうのは絶対あると思うんですけどね?

  • 戸 : ん〜、あとはまあ手前味噌ですけど、見た目はかっこ悪くは無いと思いますけどね(笑)まあデザインはね、もっと良くしていきたいとは思っていますけど、悪くは無いと思いますけどね。

  • 田 : 実際にアーティストからの意見や要望などで、特に印象深かったことは何かありますか?

  • 戸 : この間もね、SPYAIRのUZ君が来て。最初作るときに「とにかく軽くしてほしい」って言われて作ったギターが、「やっぱり軽すぎてローミッドがあまり出ないから重くしてほしい」って言われて。で、いつまでって聞いたら「3日後リハです」って言っていて(笑)

    まあしょうがないから何とかしようって言って、ボディの裏に穴あけてブリッジの裏あたりにブラスのサスティーンブロック入れて、それでもまだ重さが足りないので裏に鉄板貼って、結局2.9kgだったギターが3.5kgになって。それで弾いてもらったら、やっぱり「重くなったけど音は良くなったからOK」って言ってもらえましたけどね。

  • 僕もそのギターはライブを何回か見に行ったりしていて、やっぱり音がちょっと軽いなあと思っていたので、そこは反省点でもありますね。

  • 田 : そういったアーティストからの意見がdragonflyの製品に還元されることってありますか?

  • 戸 : 実際B6にしても666にしても、ベースの345にしても、現場で言われて生まれた仕様なので、逆に自分達からこういうものを作ろうって始めたものって殆ど無いですよ。アーティストよりは、レコーディングのエンジニアとかギターテックとかの意見の方が多いですかね。

    ギタリストの人は自分の気に入ったギターを使ってライブやってそれでお終いって人も多いですけど、エンジニアとか実際録音して音を聞いている人なんかは、やっぱりピッチが気になって「これじゃあダメだ」って思ってうちに助けを求めてきますからね。だから、うちのギターを使っている人っていうのは、みんな自分で録音して音聴いて、ピッチの悪さに愕然として、どうにかしなきゃと思って最終的にうちの楽器を選んでいるんじゃないですかね。

  • 田 : MUSICLAND KEYでもお客様からオーダーのご相談をよく頂いているのですが、オーダーの場合は実際どこまで対応できますか?例えば、トップ材の選定とか。

  • 戸 : まあ流石に持っている材全部見せてくれって言われても対応できないですけど、例えばある程度まで仕様が決まっていて、この木材が使いたいって言うのがあればその写真を何枚か用意したりは出来ますけどね。まあそこはKEYさんがうまく間を取り持って頂ければ(笑)

  • 田 : 納期はどれくらいかかりますか?

  • 戸 : ネックに関しては基本的な仕様のものはストックしているので、それであれば3〜4ヶ月程度ですかね。

    ネックもメイプル以外で作ったり、普段使わないような木材を使う場合なんかは、木材を用意してシーズニングしたりする時間も必要なので、その場合はちょっとお時間をいただいています。

  • 田 : MUSICLAND KEY限定のプリテンドシリーズについてですが、無理を言っていろいろ価格を抑えてもらっていますけど、通常のモデルとの違いを改めて教えて頂けますか?

  • 戸 : これはですね、正直に言って殆ど変わらないんですよ(笑)例えば指板はインディアンローズウッドにしたりだとか、ボディ材を3ピースにしたりとかしていますけど、原材料の値段で言ったら大して変わらないですからね。ただそれを同じ仕様で、同じカラーで本数作ることによって効率化して多少コストを抑えているので、何とかしているという(笑)まあ本来の作り方で言ったらこのPretendがレギュラーモデルで、普段作っているのがカスタムっていう感じなんですけどね。

  • 田 : 他社で言うところのレギュラーモデルっていう作り方を、このPretendでしてもらっていると。

  • 戸 : いわゆるライン生産って言うほどじゃないんですけどね。同じところで作っているので。

  • 田 : 最後に、今後のブランドの展開などについて、話せる範囲で教えてもらえますか?

  • 戸 : まあ最近は666の割合がかなり多くなってきていて、それで手一杯になってきているのもあるんですけど、本来はもっといろんなことをやりたいと思っているので。もともと昔のB.C.RichとかAlembicとか、ああいう質感のギターが好きなので、もっと「木」っぽいもの。ウッディーな製品を作りたいなあとは思っていますけどね。

  • 田 : 本日は長い時間ありがとうございました!

  • 戸 : こちらこそ、ありがとうございました。

戸谷 達明 / (株)ハリーズエンジニアリング 代表取締役

某大手楽器メーカー勤務を経て渡米、帰国後にハリーズを設立。dragonflyブランドのギター/ベースのデザインは全て戸谷氏によるもの。
dragonfly以外にも、weedブランドでのエフェクター製作やモディファイ、今や定番のアイテムとなった「ストラップラバー」など、アーティストのライブやレコーディング現場の声から生まれた製品を次々に発表。アーティストからの信頼も厚い。趣味はゴルフ。

田辺 洋太郎 / MUSICLAND KEY新宿店

ギター製作や改造が趣味で、ギターの所有本数は自分で製作したものも含めると約30本。
自宅の占有面積や金銭事情から機材の整理をしなければと思ってはいるものの、結局売ることが出来ずに毎年本数が増え続けている。
最近はコンデンサーの収集にハマッている。